さくぽんの相続体験記 ~争族篇~
【前回のあらすじ】
「キンクマハムスターの女の子、さくぽんは大好きなお父さんと幸せに暮らしていました。
しかしある時、お父さんの申し出により、離れて暮らすことになりました。
月日が経ち、さくぽんの元に「お父さんが亡くなった」という知らせが届きました。」
さくぽんは、「帰って来て下さい」と書かれた手紙の住所に急いで向かいました。
何時間もかけて辿り着いたその場所は、山あいの、美しい風景の村。そこに一軒の大きなお屋敷が建っています。
その家の前には、一人のおばあさんが立っていました。
おばあさんは、さくぽんを見つけると駆け寄ってきて、そっと抱きしめてくれました。
「さくぽん、ずっと会いたかったよ。これまで一人にして、本当にごめんなさいね。
お父さんは、さくぽんのことを心から大事に想っていたの。でも、この家の後継ぎだったから、戻って来てくれたのよ。
お父さんから手紙を預かっているから、まずは体を休めて、ゆっくり読んでね。」
おばあさんは目に涙を浮かべながら、優しく語ってくれました。
さくぽんが手紙を開けると、そこにはこれまで知らなかった、お父さんの胸の内が記されていました。
「さくぽん、この手紙を君が読む頃には、お父さんはもうこの世には居ないだろう。
君には苦労をかけたね。でも、お父さんが背負った苦労を、君には継がせたくなくて今まで言えなかったんだ。
実はお父さんは、この村の大地主の長男で、後継ぎとして厳しく育てられた。
だが、お父さんがまだ若い頃に、君のお母さんと出会って恋に落ち、結婚を反対されたため、やむなく駆け落ちしたんだ。
やがて君が生まれ、幸せな生活を送っていたけれど、ある時、お母さんが森に食料を探しに行ったまま、帰って来なくなった。
もしかしたら、野鳥に襲われて食べられてしまったのかもしれない。
それからは君を心の支えに、ささやかながら充実した生活を送ることができたが、そのうち実家から戻ってくるようにという手紙が届くようになった。
自分の所で、後継ぎ問題を解決しようと決心して、お父さんはこの家に戻ってきたんだ。
お父さんは懸命に頑張って、出来る限りのことはやった。だから、何も心配することはないんだよ。
君には自分の思うように、自由に生きていって欲しい。そのために、1000ハムのお金を残したから。
お父さんはこれからもずっと、君のことを見守っているよ。」
さくぽんは大泣きしながらお父さんの手紙を読み、悲しいながらも、お父さんの愛情をひしひしと感じて、幸せな気持ちになりました。
しかしその後、事件は起こります。
お父さんの娘として、戸惑いながらも喪主の大役を務め、お父さんの形見と手紙と共に帰ろうと思ったその時、親戚の一人から呼び止められたのです。
「あなたのお父さんが遺したお金は、元々はおばあさんのものだったのです。だから、返して下さい。」
さくぽんは、びっくり仰天。お父さんからの手紙には、そんなことは一言も書かれていません。一体、どういうことでしょう?
さくぽんは困りましたが、お父さんと離れてからお金についての勉強をしていたたため、しばらく考えた末、こう答えました。
「お父さんの遺したお金は、まだ私のものになると決まった訳ではありません。だから、私が自由に引き出すことはできないんです。」
そしてさくぽんは、人生で初の相続という大きな問題に取り組むことになるのでした。つづく。
~~~ 解説 ~~~
前回に続く、相続体験記「争族篇」です。実際の出来事を脚色してはいますが、ポイントとしましては以下になります。
① 相続人の確定
被相続人(この場合は、お父さん)の遺産を継ぐ相続人は、順位の順番として「配偶者⇒子⇒父母⇒兄弟姉妹」となります。
さくぽんの場合はお母さんが行方不明(かなり前に亡くなっている可能性が高い)のため、お父さんの相続人はさくぽんだけになります。
ただし、お父さんが遺言書を残していた場合、また他に子どもがいた場合は相続人が増えることになるため、相続人の調査をする必要があります。
② 相続財産の確定
相続する遺産にはプラスの財産(現預金など)だけではなく、マイナスの財産(借金など)も含まれます。
財産調査を行い、マイナスの財産の方が大きい場合は相続放棄をすることも考えられますが、その前に遺産を引き出すと相続放棄ができなくなる可能性があります。
次回からは、実際の相続調査の過程をさくぽんを通して物語化したいと思っております。
できるだけ分かりやすく、かつ面白く・・描けるように試行錯誤してみます(^^;)