さくぽんの相続体験記 ~エピローグ~
【前回までのあらすじ】
「キンクマハムスターの女の子、さくぽんのお父さんが亡くなり、唯一の相続人だったさくぽんは相続の手続きを行うことになりました。
遠方に住んでいたお父さんの葬儀の喪主を勤め、事情がよく分からない争族に巻き込まれ、初めてのことで四苦八苦しながらも何とか順調に手続きを進めてゆきました。
そしてついに、4ヶ月にわたる相続手続きは完了の時を迎えつつあったのでした。」
お父さんが遺してくれた預金の相続手続きを終えたさくぽんは、その足で昔、お父さんと一緒に住んでいた街に向かいました。
お母さんと出会い、結婚を反対されて駆け落ちし、やがてさくぽんが生まれて、家族一緒に暮らした場所。
途中からはお母さんは居ませんでしたが、お父さんと一緒に、ささやかな幸せに包まれていた場所。
自分のことは多くを語らなかったお父さんの、無言の愛情に包まれて守られていた場所。
その場所は幾多の変容を経ても、さくぽんの思い出の地として、さくぽんを優しく迎え入れてくれているようでした。
しばし思い出に浸っていたさくぽんは、ふと、いろいろあったこの4か月間のことを考えました。
お父さんの訃報を知らせる突然の手紙、おばあちゃんとの出会い、まさかの争族。
ドキドキしながら行った相続人の確定、ハラハラしながら行ったマイナス財産の調査。
複雑怪奇で泣きながら行った車の処理、意を決して行ったお父さんの預金記録のデータ化と分析。
初めは遠い、遠い道のりのように感じましたが、あまりに密度が濃すぎて、何だかあっという間の出来事のように感じます。
辛いことも、しんどいことも、投げ出したいこともあったけれど、不思議と幸せも感じていた期間。
それは多分、大好きだったお父さんの人生を、一緒に歩いているような気分になっていたからだと思いました。
自分と一緒に暮らしていた頃のことは分かるけれど、それ以前と、それ以後の、さくぽんの知らなかったお父さんの人生。
相続手続きを行う中で、さくぽんはお父さんがどんなことを考えて、どんな生活をしていたのかを想像し、疑似体験する機会を得ました。
お父さんが亡くなったことはとても悲しいけれど、心は落ち込むことなく、平穏を保っている。
それはもしかしたら、お父さんが遺してくれたもう一つの財産だったのかもしれません。
語ることができなかった自分の人生を、相続によってさくぽんに知ってもらい、悲しみを乗り越えていって欲しいと。
自分の人生をしっかりと認識してもらうことで、お父さんはずっとさくぽんのことを支えていると分かって欲しいと。
さくぽんはお父さんの手紙に書かれていた言葉をもう一度、思い出しました。
「君には自分の思うように、自由に生きていって欲しい」
多分、お父さんが心から望んで、でも自分の人生では真に果たすことができなかった夢。
さくぽんは、その夢を今度は自分が、心の中のお父さんと一緒に叶えてゆこうと決意しました。
「お父さん、一緒に夢を叶えてゆこうね。さくぽん、お父さんが居てくれたら、鬼に金棒だから!」
さくぽんは晴れやかな気持ちで、生まれ育った地を後にして、岐路に着きました。
そして、そんなさくぽんを後押しするように、爽やかで力強い風が空から舞い降りてきたのでした。終わり。
~~~ 解説 ~~~
全7回となった「さくぽんの相続体験記」、最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。
結局は、自分のパーソナルな記録に過ぎない・・と思いつつも、皆さまの現在とこれからに、ほんの少しでもお役に立てましたら幸いです。
相続手続きを始めた当初は、「親の社会的役割を一旦、引き継ぐのは子の役目」と思い、かなり悲壮な覚悟で取り組んでいました。
しかし進める内に、相続手続きとは「亡くなった方の生前の人生の軌跡を辿り、この世での生活に終止符を打ってゆくこと」と思うようになりました。
実体としての存在は終了しても、その人の想いは誰かの心の中に残り続けて、受け継がれてゆく。
それはとっても、素敵なことなのではないかと思います(*^^*)
「さくぽんの相続体験記」、これにて終了。一件落着・・となったら良かったのですが、世の中はそんなに甘くはありません(T_T)
私には今後、おばあちゃんの(代襲)相続が待ち受けています💦
既に波乱の波は来ていますが、「大奥」並のドロドロ展開になったら、さすがにブログネタにはできないかもしれません。
今夜はちょうど満月なので、浄化作用のあるセージの葉を焚いて、心の中の父にお願いしようと思っています。
「どうか、四方八方丸く収めるために力を貸してね」☆彡
それではまた、いつの日にか「相続体験記」でお会いできる日まで・・。