キュー(球) ~③~
土が違う。水が違う。気候も違う。
ここはどこ?私はどうしてここにいるの?
でも、何だか不思議。とっても穏やかで、幸せな気分。
私を見つめるあなたの瞳の中には、溢れるほどの愛が満ちているから。
出せない恋文に認められた想いが、私を優しく包み込んでゆく。
あなたの愛に包まれて、私は今日もすくすくと育ってゆく。
「テーマ:男爵芋の恋文」
~~~ 解説 ~~~
男爵芋。ホクホクとした食感が魅力で、蒸かしてバターをかけた「じゃがバター」は絶品ですね🍴
私がまだ栽培の学校に通っている時、尊敬する恩師から男爵芋の秘話を教えていただきました。
その話がとても印象的で、いつか作品にしたいと心の中で温めていました。
男爵芋は、川田龍吉男爵が作った芋ということから、その名が付けられたそうです。
川田男爵は1856年に土佐で生まれ、1877年に造船技術を学ぶためにイギリスに留学しました。
このイギリス留学中に、イギリス人女性ジェニーと知り合い、恋人同士になったのです。
デートでは畑を眺めたり、温かいジャガイモを食べることが楽しみだった二人。
交際は順調に進んで、結婚の約束もしましたが、当時はまだ国際結婚が難しい時代。
二人の想いは叶わず、男爵は帰国して離れ離れになってしまいました。
そして後に北海道に渡った男爵は、函館の風景がイギリスに似ていたので、この地でジャガイモを育ててみたいと思い立ちました。
「ジェニーと共に食べた、思い出のジャガイモを、この地で育てて食べてみたい」
海外から様々な種イモを取り寄せて試験栽培を行い、その中のアイリッシュコブラーという品種が男爵芋の元となったのです。
男爵はジェニーへの想いを胸に秘め、生涯にわたり誰にも話すことはなかったそうです。
しかし男爵が亡くなってから数年後、金庫の中で大切に保管されていた金髪と90通ものラブレターが発見されました。
ラブレターにはたくさんの✖マークが。これは、イギリスではキスマークを意味するのだそうです・・💞
愛する人と一緒に居られない。大事な人と離れなければならない。それはとってもとっても、辛いことだと思います。
しかし、愛する想いを持ち続け、その想いをジャガイモの栽培に注いだ男爵は、幸せな人生を送られたのではないかと思いました。
たくさんの愛情を注がれたジャガイモが北海道の地に馴染み、美味しい男爵芋となって、多くの人々に幸福を届けることになったのですから✨
↑こちらは去年の春、男爵芋とメークインの畝の様子です。初夏には、我が家の食卓に美味しい恵みをもたらしてくれました⤴
今年も既に種イモは植えてあるのですが、今日の季節外れの大雪で生育が心配です💦
男爵芋たちに、心からの愛情とエールを送ります。どうかどうか、無事に育ってね~(^^)/